「雨パにはナットレイ」の罠 [ポケモンダブル]

こんにちは、NoFaceです。

対戦理論記事にハマりつつあるので、シリーズ化を真面目に検討しています()

テーマはどれも雨パのお話で、私がこれまで雨パ専門プレイヤーとしてやってきて感じたことを言語化して残すのが目的です。

今回のテーマは

「雨パのナットレイについて」

大きく分けて以下の流れで綴っていこうと思います。

 

○目次    

 

*以下常態

 

1.はじめに

5世代から登場して以来、様々な構築で活躍するナットレイというポケモン。雨パーティにおいても例外ではなく、

「雨パにはナットレイ

と言われ、雨要員の補完として親しまれてきた。私も数えきれないほどお世話になっている。今回は、そんな雨ナットレイの在り方について考察したいと思う。

 

2.一般的なナットレイ

そもそも雨ナットは、何故雨パーティとの相性がいいのだろうか?ポケモンダブル界では具体的にどのような強みを評価をされて、雨パに採用されているのだろうか?

2-1.雨ナットレイの強み

一般的な雨ナットの評価点は、大きく分けて以下の要素に分かれる。

 

❶雨要員と縦の相性補完が良い(電気・草を半減など)

トリックルームの対策になる

❸単体での詰ませ性能が勝ち筋を作れて好評

❹草タイプ

❺フェアリーの処理ができる

 

❶ 弱点が被りやすい雨パは、他の構築と比べて交換がしづらい。しかし、雨エースが苦手とするタイプの攻撃はナットレイがほぼ半減で受けてくれるため、安定した引き先となり、取るべき行動が分かりやすい。

また、ナット自身も雨の恩恵で4倍弱点の炎を耐える可能性が出てくるので、他の構築と比べて動かしやすくなっている。

❷S20と鈍足なため、相手のトリル下で暴れることができる点が、単なる補完枠以上の重要な役目をナットレイに与えている。鉢巻を持つと雨の障害となる大体の相手を一撃で倒せる。

❸従来の宿木守る戦法に加え、8世代ではボディプレスを習得し、主流の型となった。次の表は、8世代最後のダイマあり全国ダブルS20でのナットレイの技使用率の統計である。

 

ボディプレス鉄壁がそれぞれ3.4位なのに対し、メインウェポンのパワーウィップがまさかの5位、次いでジャイロボールが6位まで低下している。このことから、現代のナットレイの型の主流はほぼ鉄壁ボディプレス型なのではないかと思う。構築に合わせてどちらかを抜いて攻撃技を採用している人も考えられるが、実際、皆さんもナットを選出画面で見た時、第一に鉄壁プレスのセットを警戒するのではないか。

そして、このデータからは、「多くの人がボディプレス以外の攻撃技を切っている可能性が高い」ということが言えるだろう。この情報の有無で、例えば「水地面のポケモンをナット前で動かせる」など、取るべき行動が大分変わってくる。

❹雨で突破するのに時間がかかる水タイプに高威力の打点があるため、シナジーが極めて高い。

しかし、上記の通り、ナットの本来のタイプの技の採用率は落ちている傾向にあり、パワーウィップなどの強力な草技を採用しない雨ナットが数多く存在すると思われる。実際私も何度も遭遇している。

❺雨選出は、カプレヒレトゲキッスニンフィアなどの高耐久フェアリーを苦手とし、対面で分が悪いという弱点がある。これは、攻撃の要がキングドラやルンパッパであることが大きな要因だ。

鋼タイプのナットはこれらに大ダメージを与えて雨に貢献するという、草タイプ同様のシナジーを持つため、ここでも相性が良いと言える。

 

この❶〜❺の特徴を持ち、ナット自身の種族値も高いため、大多数のプレイヤーに信用されている。

 

2-2.型の変遷

昔のデータを集めるのも難しいため個人的見解も含むが、概ね次のような変遷を辿っていると言えるだろう。

 

<5世代>

初登場。残飯持ちで宿木/守る/草/鋼の基本形が確立された。あまり聞いたことはないが、ジュエルによる奇襲型もわずかに存在していたかもしれない。

<6世代>

フェアリー登場により、鋼タイプとしての需要が上がったと思われる。また、当時までは麻痺の弱体化前であり、環境単位で評価が高かったことから、S操作も兼ねられる電磁波を採用したプレイヤーも見受けられた。私はこれをとても気に入っている。

<7世代>

GSルールでカイオーガに安定した即死ダメージを与える草Zが個人的に評価が高かった。

また、この世代で流行した「限界雨」の型である「拘り鉢巻」が、最も数を増やした世代でもある。

<8世代>

ボディプレス登場により、環境の半数以上が鉄壁プレス型になる。ただ、この世代でも猛威を振るうトリトドンを意識してなのか、宿木/守る/鉄壁/プレスのいずれかを草技に変更している人も見受けられた。

 

3.問題提起

ここまで雨ナットの実態を整理した上で、私は既存の雨ナットに対し、二つ問題があると感じている。

 

一つ、雨と鉄壁型の相性が良くないのにも関わらず、特に深く考えずに鉄壁型のナットレイを採用してしまう人がいること。

一つ、「雨パにはナットレイを採用しておけば間違いない」と、ナットレイを盲信してしまう人が多すぎること。

 

前者は雨とナットの関係性の本質から遠ざかる行為であり、後者は視野を狭める行為であると考える。そして、初心者を始め雨パーティを使う人の多くが陥りがちである。

ここからは、なぜこれらが誤りだと言えるのかを説明する。そして、これから雨パを使う人がこれらの問題が原因でレートで苦戦し、雨を使うのをやめてしまうことがないように、ナットの良い使い方の一例などを紹介したいと思う。

 

 

4.本論

まずは雨ナットの構築上の役割を再確認し、その上で鉄壁型がなぜ不適切なのかに繋げたい。

*強み→活躍が見込めるポイント全般

 役割→数ある強みの中でもその構築内で何を優先しなければならないか

このような使い分けをしている。

 

後半では、「雨パにはナットレイ」がなぜ危険なのかを説明する。

 

4-1.雨ナットの役割

2-1で述べた一般的なナットの強みを踏まえて、ナットレイというポケモンが雨パにおいて何をしなければならないのかを論じる。

ナットの役割についてTwitterで軽く調査をしたところ、次のような意見をいただいた。

・(トリル対策など以外にも)雨ミラーのために採用されている。

→7世代限界雨流行期のように、環境によっては雨ミラーが多発する可能性があり、その場合は鉢巻ナットのパワーウィップが勝負を有利に進めるため、確かにその主張は妥当である。(私はミラーした場合のことを考えずに作っているため、新鮮な発想に感じた)

 

この意見も踏まえて、私の見解に移ろうと思う。

 

前提として、雨パーティというものは、威力を上げた水技での突破を第一の攻撃手段とする。

それならば、水技を半減で受けてくる相手の水タイプは、突破するのに時間がかかり、制限つきの雨ターン中に勝ちきれないという問題が生じてくる。

そこで、水タイプに大ダメージを与える(かつ相手の草電気の一貫を切れる)草タイプのポケモンが、雨選出と攻撃補完的に相性が良いと言える。

 

ただし、草タイプというだけなら、カミツルギやゴリランダー、モロバレルなども候補に上がってくる。カミツルギは同タイプ、ゴリランダーはトリル下でも先制攻撃ができるし、モロバレルは妨害技でトリルのテンポを崩せる。

このように、ナットと共通項を持つ草ポケモンは存在する。しかし、ナットは水に高い打点を持つ(バレルでは難しい)、トリルの対策枠になる(ツルギでは対応不可)、鋼への高い打点を持つ(バレルでは難しい)という三つのありがたい要素を満たした草タイプであるため、数ある草タイプの中から雨に採用される場合が多いのだ。

つまり、ナットレイは第一に「最良の草タイプである」という点で、雨パーティの試合展開に大いに恩恵をもたらしているのである。

よって、草技で相手の水に大ダメージを与えることが、必然的に雨構築上でのナットレイの第一の役割となる。

*先程紹介した雨ミラー対策という意見も、水に大ダメージを与えるという役割の中に含まれる。

 

第二に、トリックルームの牽制枠」であることが重要だ。鉢巻による崩しや、鈍いで積みエースになることで、相手のトリルを逆手に動ける。ただし、ナットにパワーが足りないと、相手に圧をかけきれず、こちらの横のポケモンを多く減らされてしまう点は注意が必要である。

*もしトリルを確実に封じる手立てがあるorトリルを張られても構わない構築にできるなら、ナットは必ずしも必要ないと私は思う。その場合、解禁されているなら即カミツルギを使う。

 

以上の二点が、雨ナットがこなさなければならない役割だと私は断言する。当たり前のことを言っているかもしれないが、これを再確認した上で次の話に移る。

 

4-2.要塞型の問題点

ここまでの流れから分かる人もいると思うが、攻撃技をボディプレスのみにした要塞型のナットレイは、上記の役割を放棄している。ここでいくつか例を挙げて、これがどう不味いのかを検証してみる。

 

*こちらの盤面は、いずれもキングドラナットレイ(裏ニョロトノ固定)とする

ダイマックスは使用不可とする

例1) 

対面()

キングドラクレセリアを削り、裏のヒードランまで処理したいが、レヒレムーンフォースで倒されてしまうため、行動を制限されている。ここで、本来ならグドラを一度守らせ、レヒレパワーウィップを振る(→グドラ圏内に入る)のが、一先ずの安定択となる。

しかし、ナットがジャイロはおろかボディプレスしか覚えていないと、レヒレへの打点が皆無となり、瞑想の起点にされ、ムンフォを何発も許してしまう。グドラで残数を減らせないため、ナットが要塞化したとしても裏のヒードランを合わせられて詰む。瞑想を積まれクレセのサポートも絡むと、こちらの裏の4体目が誰だろうと巻き返すのは難しいだろう。

 

例2)

対面

ミロカロスはとぐろ催眠型が有名で、起点を作られると大変なことになる。そのため、早めにウィップを入れて削り、グドラの竜星群圏内に押し込まなければならない。しかし、ここでも草技がないためミロにガン起点にされてしまい、全員眠らされる。

 

例3)

対面

トドンの呼び水で全ての雨エースは水技を制限されるため、速やかにナットで処理したいが…

以下同文。

 

構築上の役割を放棄すると、このような悲惨な思いをしてしまう。なぜ、要塞型ナットはこのような事態を招いてしまうのか。

その答えは、この型が構築で浮いてしまっているからだと考える。役割を放棄するということは、味方にほとんど恩恵を与えずに存在するということだ。ナットだけ独りで戦っているようなものである。

そうなってしまえば、それは最早構築とは呼べないのではないか。縦横のポケモン同士が連動して盤面が動いていくからこそ、"構築"同士をぶつけ合うポケモンバトルは面白い。鉄壁型のポケモンは、適切に組み込まないと、バトルの魅力の一つを損なう結果を生むと私は思う。

しかし、鉄壁ボディプレスという戦術自体が、なまじ単体で完成された強力な戦術でもあるため、たとえ構築単位では破綻していても、噛み合いが良いとナットのゴリ押しで無理やり勝ててしまうことがあるのも事実。それゆえに、雨ナットには不適切だと気づきにくいのだろうと感じる。

また、要塞型の立ち回りを見ると、ナットの体力を確保して要塞化を完成させることが目的に変わっている人が見受けられる。あくまで体感だが、そのような人はしきりに宿木を入れたがる印象がある。そのターンに鉄壁を押されていたら負けていたが、相手が宿木から選択していた故にこちらに余裕ができて勝てた試合を私は何度も経験した。要塞化したら詰む駒というものは、そこにヘイトを集めておいて隣を安全に通す動きもできた方が強いと思うのだが、ナットを介護する人はそこにばかり意識を集中し、ナットを残すには鉄壁が先か宿木が先かで迷ってしまい、行動がブレているようにも感じる。

 

以上が要塞型が陥る問題点となる。

 

*8世代のナットレイのデータを見ると、鉄壁の使用率は初期こそ低かったが、S12(冠ダブル)辺りからは使用率が平均4〜5番目へ上昇し、S19.20では4番目で安定している。雨ポケモンとの関係は、S1〜7ではペリッパーが3/7ヶ月分、S8〜20(3シーズン分の竜王ダブルを引く)では、ニョロトノキングドラがそれぞれ5/10ヶ月分使用率ランキングtop10にランクインしている。

環境のナット全てが雨ではないし、全ての雨ナットが要塞型とは言えない。ただ、雨要員はナットと同時に使用されていることが多いため、ナットの雨率は比較的高い。そして、鉄壁の使用率は初期に比べて大きく上昇している。このことから、雨に要塞型が採用されている確率は上がっていると思われる。

加えて、雨パの情報を誰よりも追っている私個人も、ペリカメナットなどの2020年〜今にかけて注目を集めていた雨ナット構築は、要塞型で採用されているものが多かったと記憶している。

そのため、今の雨ナットの要塞型率は総じて高いと主張させていただく。

 

使用率の推移を表にまとめた。最初は草技を採用した雨ナットの方が多かったが、鉄壁型が次第に数を増やし、8世代中盤には最大の型となっている。(一応要塞型雨ナットの構築は鎧環境以前から一定数存在している)

 

ここからは、想定される反論にいくつか解答していく。

 

Q.単体で完成された強力な戦術なら、構築としてのまとまりがなくても大抵勝てるので問題ないのではないか?実際に私は鉄壁型雨ナットで勝てている。

A.第一に、強力な戦術ではあるものの、試合展開次第では通用しない時も多々あるため、過信は禁物である。

第二に、要塞化に拘る必要がない。雨エースが苦手なポケモンに一撃入れてから交換してニョロトノを出す動きができる方が、雨も通しやすいし選出に幅が生まれる。

第三に、ナットが突破されにくいということは、防御上昇以前に、そもそも相手にナットへの打点が乏しい可能性が高い。それならば、寧ろ存分に攻めてダメージレースを有利にする方が、分かりやすく試合を進められるのではないか。

 

Q.ナットが孤立化したり水タイプの起点にされないように、その他のポケモンを補完として選出し、対策するのではないか?構築は3体で完成するわけではないのに、雨とナットだけで話を進めるのはいかがなものかと思うし、他で対策枠を用意できるなら要塞型でも問題ないはずだ。

A.勿論残りの3体でナットを動かしやすくするように組むべきだ。だとすればなおのこと、わざわざ手間の掛かる要塞型にするメリットがない。恵まれたタイプと種族値を活かし、残りのポケモンと連動して攻めた方がいいのに、場に固定してしまうと構築の対応力が低下する。

また、水の起点にならないように例えば電気タイプを選出するとしても、ナットが草を振るだけで本来事足りていた相手に余計にリソースを割くのは非効率である。電気タイプは相手の飛行に役割を持つという雨構築上の役割があるが、ナットが本来担当していた攻撃範囲までカバーし切れるほどの余裕はない。

 

Q.ナットはパワーウィップを外すがボディプレスは確実に役割を遂行できるし、どう使うかは本人の好み次第なのではないか?

A.そんなことを言っていたらキリがない。雨勢とて水技は大概命中不安定だし、ナットにも種爆弾のような安定技はある。それこそ好みによって使い分けていただきたいが、どうしても要塞型を使いたいのであれば、雨をやめてもっとナットが活かせるように構築を考えた方がいい。

 

こんなところだろうか。鉄壁ボディプレスは、雨ナットが勝利する原因にはなり得るが、雨ナットが勝利する理由にはならない。

キングドラが暴れた後に雨下のナットレイが鉄壁ボディプレスを決めてくるため、雨+ナットレイの並びは勝てる!」

という主張は、次の二つの観点から誤りだと言える。

一つ、ナットである必要がない。鉄壁プレスを使えるポケモンは他にもいる。なぜ4倍弱点のないレジスチルを使わないのだろうか。

一つ、雨ナットの歴史上でこの型は最も新しい。5世代から存在する並びの強さの理由が、ぽっと出の陰湿戦法であるはずがない。

このことから、要塞型ナットは雨ナットの勝てる理由にはなり得ないのである。本当の理由は、上記の雨とのシナジーにある。

もしどうしても雨で鉄壁をしたいのであれば、ドータクンレジスチルなどを推奨する。彼らは他の採用理由(ギミック含めて)もあったり、要塞化と味方補助技を状況に合わせて使い分けられるため、まだ構築との連動は取れる。

 

4-3.ナットレイ依存

「雨パにはナットレイ」という言葉が嫌いだ。そう考えるべきではないと思う。古事記に書いてあるらしいが、そんな古事記は存在しない。

 

では、なぜよくないと言えるのか。雨とナットの相性関係は今まで証明してきたはずなのに、ナットは雨パに必須のポケモンではないのか?

 

なぜなら、ナットレイに依存してしまうことで、ナットレイしか知らなくなってしまうからである。そして、ナットレイは雨パに必須のポケモンではない。

ナットよりも適切なポケモンを採用すべき場合でもそれに気づかず、ナットの弱点も意識しないまま、漫然と使い続けてしまう。また、もしナットがいない環境が訪れた時、どのように構築を組めばいいかが分からなくなる。構築上でナットが占めているポストは大きいが、ナットを採用しなかった場合どのように組むべきかを、雨パを使う人なら本来考えておかなければならない。そうしないと、そこでプレイヤーの構築力は止まってしまう。

偶にしか雨パを使わない人でも、「ナットレイが必須」という情報に釣られて、あまり吟味しないままナットを採用してしまうことがある。しかし、本当はナットより構築に噛み合うものが存在するかもしれない。ここを疑わない人は、85点以上になる構築を自ら75点に止めてしまうことになる。

この私の主張の問題点は、「雨パにはナットレイ」が、完全に誤りであるわけではないところだ。ナットを構築に入れることで得る恩恵は、先述したように多い。よって、何も考えずナットを採用するというだけでも、最低でも60〜65点のクオリティの構築が保証されてしまうのである。「でもナットを入れれば大体それっぽくまとまるじゃん。」と言われると、「それはそうではあるけども」としか言えないだろう。

しかし、それ以上の構築を目指す人なら、その考えは捨てるべきだということは断言できる。そのため、これはJCS以上の目標を掲げている人に向けた問題提起となる。ネット予選を抜けるには少なくとも85点の構築が必要だと、私は予選を通過した経験から感じたので、「雨パにはナットレイ」は、85点以上の構築を目指す人の障害となる。

 

4-4.ナットレイとの差別化対象

では、ナットより適任のポケモンが存在する場合とは、どのようなものか?これは本当に場合によるが、例として私が8世代上位禁止ルールのランクマで最終2ページ目を達成した構築を上げる。

 

https://liberty-note.com/2020/10/03/swsh-double-season10-19th/

 

アシレサマヨナットという強力なトリル軸に対し、ナイトヘッドを耐える身代わりガマゲロゲと、剣の舞でトリルターンを逆手に取って全抜きを狙うシュバルゴという回答が特徴的な限界雨構築である。

今回ナットと比較するポケモンはこのシュバルゴ。「雨パにはナットレイ」の陰に隠れてしまった逸材だ。

シュバルゴは草タイプではないため、ナットの役割だった対水打点を叩き込むことはできない。しかし、代わりに雨の弱点をついてくる草タイプへの打点となる「虫技」を持ち、特性「防塵」は、キノコの胞子や眠り粉などを無視して動ける点で、ナットと共通している。

また、種族値が70-135-105-60-105-20と高く、素早さもナットと同速、攻撃力が高いため等倍メガホーンで水タイプにも良いダメージが入る。

シュバルゴのナットとの差別化点は以下の通りである。

❶対草打点

❷攻撃力(残数を減らす能力)が高い

❸水打点

 

❷ ナットより遥かに火力が出るため、トリル下での圧力をかけやすい。正確には、ナットは「トリル展開をされても圧をかけれる」ポケモンであるのに対し、シュバルゴ「トリルを逆手にとってアドを稼ぎまくる」ポケモンと言える。トリル展開に対してどのような対応をしたいかによって、雨パでどちらを採用するか分岐が生じてくるレベルのポケモンだ。

私は剣の舞を採用し、トリルを起点にする方針をとった。相手が雨にも負けずトリルを張るには、サマヨなどの高耐久ポケモンを初手に固める必要があるが、火力不足のためシュバルゴ剣舞の隙を与える。サマヨが鬼火を採用しているため相殺されてしまうが、鬼火を撃たせているということは、その分相手が緩い行動で場に居座ってくれるため、トリルターンが潰せて雨で反撃しやすくなる。そして、私は最終的にはラムの実で採用したので、そんなサマヨの行動すらもカモにしていた。

 

❸ 今作からシェルブレードを習得した。剣舞ペリッパー引き雨ダイストリーム」の動きは、ほとんどの炎タイプを破壊できる。これはガエン以外の炎タイプに回答がないナットにはできない芸当である。コータスが来ても最悪同速なので、十分に勝負できる。

 

このようなところか。他にも、シュバルゴダイマックス適性が高く、ワームとスチルでバフデバフを駆使しながら戦えるため、相対的に生存率が高かったりする。

もしこの構築にナットを採用していたら、火力不足によりサマヨで無力化され、敵のナットとのミラーで負ける。(アシレサマヨナットにおいては、鉄壁型のナットは成立すると評価している)

そして、放置されたナットの横の味方がどんどん倒れていくので、仮にナットの刺さりが良かったとしても、構築単位では試合負けしている。

一方、シュバルゴは一度剣舞を積んで3ターンダイマックスしているだけで、ナットの倍の仕事をしてくれる。具体的には、A特化+2ダイワームで207(252)-156(52)↑までの図太いスイクンが確定1発。火力upアイテムなしでこれほどの火力が出せるのだ。

ナットを採用したことで対面でそこまで有利ではない相手を「トリル対策」と宣って相手にするより、虫・鋼・水の隙のない技範囲で手っ取り早く残数を減らせるシュバルゴは、この構築においてナットよりも試合に貢献していると言えるだろう。シュバルゴでなければ、私はこのシーズンで好成績を残せていなかった。

 

以上がナットレイが雨パに必須ではなく、他に適任のポケモンがいることがある」という証明となる。仮にナットが雨に必須なら、シュバルゴはナットに仕事を取られて採用の余地がなくなっている。

 

「雨パにはナットレイ」が、必ずしも「雨パはナットレイを必須としている」という意味で認識されている訳ではないのかもしれない。しかし、補完枠を考える時に、多くの人はやはり言葉通りにナットに引かれていってしまうだろう。そうなると、シュバルゴなど思いつきもせず、ナット採用に甘んじてしまい、視野が狭くなる。視野を狭めることは、自分の限界を自分で定めることに繋がる。こうして、「雨パにはナットレイ」が定着すると、初心者を中心に似たり寄ったりの微妙なパーティが出来上がってしまい、勝ちきれずに雨を使うのをやめてしまう人が出てくる。この勝ちきれなかった理由は雨パに限らず「構築の本質」的な間違いなので、別のパーティでも同じことをしてしまうと思う。

よって、「雨パにはナットレイ」という、ナットレイへの盲目的依存行為は、誤りだと断言する。

 

ナットレイを否定する訳ではない。実際に前半で示した通り、雨ナットは強い。しかし、雨ナットを万能と信じている人が多すぎる(みんなナットレイを入れてるし、そんな人を五万と見てきた)ので、採用する際には構築の方向性と役割を明確にし、本当にナットレイで良いのかをよく吟味する必要がある。

 

4-5.仕事のできるナットレイ

ここまで長々と批判ばかりを綴ってしまったので、最後に"役割を遂行できる型のナットレイ"をいくつか提案しようと思う。良かったら参考にしていただきたい。

 

1.電磁波ヨプナットレイ

持ち物:ヨプの実

性格:勇敢

技:パワーウィップ/ジャイロボール/電磁波/守るorステルスロック

配分:179(236)-146(148)-151-*-152(124)-22(個体値0)

調整:

A.棘ダメ+ジャイロで-1無振り悪ウーラオス(インファ後)を確定1発

B.陽気252ウーラオスの暗黒強打が中乱数(普通に危ないので諸説)

D.DL対策のB<D(ここを諦めるべき?)

 

電磁波を採用することで、雨に対抗するS操作要員&高速アタッカー全般の足を奪うという新たな役割が生まれる。明確な仮想敵はいないが、有利ではない対面(又は炎が受けにくる対面)で雑に麻痺を撒くことで、S操作という観点からも雨エースを補助する。

また、ヨプの実で格闘技を耐えるため、不利対面でも動かしやすくなっている。インファを耐えて切り返すことで、理論上どちらのウーラオスにも勝てる。

ステロはエレキウーラの襷を剥げる強力な技で、特に天候を奪いにくるコータスやRキュウコン、ファイヤーやマルスカイリューなどの厄介な飛行にも刺さる。この枠は守るとの選択でよいかもしれない。

この型はダイマなし全国ダブルで使っているが、草&対フェアリー&S操作の役割は、できることが多くて(型が知られていても)使いやすい。

 

2.身代わりHAナットレイ

持ち物:奇跡の種

性格:勇敢

技:パワーウィップ/ジャイロボール/身代わり/守るor鈍い

配分:181(252)-159(244)-151-*-138(12)-22

調整:

A.177(252)-146(84)までの控えめレヒレをウィップで確定1発

 

身代わりにより草技を振る回数を増やせる型。炎タイプ前でも水の動きを制限できるため、ナットの第一の意義を補強した形となる。

例えば、先程の「グドラナット(トノ)vs.レヒレクレセ(ドラン)」の対面を考える。初手でグドラ守るナット身代わりから入ると、敵のレヒレが「グドラ守る&ナット攻撃」に合わせて「レヒレ守る&クレセ→ドラン交換」を選択し、ドランでナットを縛ろうとしてきたとしても、ナットの身代わりが無償で決まるため、結果的に相手は2ターン分ナットの草技の脅威に怯えることになる。

そうすれば、2手目はグドラを裏に引いて受けながらレヒレを攻撃。確一にしやすいように火力は高めに確保しておく。とすることで、ヒードランの前で堂々とナットを動かすことができるわけだ。

 

このような型にすれば、構築での役割を遂行しやすいナットレイとして、本当の意味で雨パで活躍できるのではなかろうか。これらはあくまで一例なので、皆さんもどうかこの視点を持ってナットレイの採用・運用について熟考していただきたい。

 

5.結論

全体をまとめると、

 

○雨ナットは第一に草タイプ、第二にトリル対策枠として、雨パーティ内での重要な役割を持つ。

○要塞型雨ナットは、上記の雨ナットの役割を放棄し、構築内で浮いた型であるのに、世間では当たり前のように信用されている。

○「雨パにはナットレイ」と雨ナットに依存する思考は、自身の成長を阻害する誤った認識である。

○雨ナットは万能ではないし、他のポケモンを採用した方が構築の完成度が上がる時もある。

構築での役割を重視し、ナットでよいか常に吟味する姿勢が重要だ。

 

となる。もし初心者に教えるならナットレイから進めるかもしれない。しかし、使い勝手がいいからというだけでこれに固執させず、様々なポケモンの可能性を同時に提示する。そうして初心者だった人が自分で考えて構築を作れるように導きたい。

 

6.おわりに

ポケモンの対戦環境は新時代を迎えているが、SVにはナットレイはまだ内定していない。もしこのままナットレイが入国しなければ、これから雨パを使う人は、ナットレイのいない雨パーティ」を組み続けなければならない。前作では地方にも内定し、長らく雨パを最前線で支えてきたナットレイ。だが、雨パユーザーは彼らがいなくなっても当然戦い続ける。

「雨パのナット離れ」はそう遠くない未来に実現するのかもしれない。

 

 

 

 

いかがだったでしょうか?「愛」ゆえにとんでもない長さの文になってしまいましたね。

実は私、このポケモンが結構好きなんです。

しばらくお別れになるかもしれませんが、これからもナットレイに頼らず、強い雨パーティを作って活躍していきたいものです。

 

次回は雨パーティと炎タイプの関係性についてでも書きたいなーと思っています。

(そのためにまず卒論を終わらせる)

 

それでは、ご愛読ありがとうございました!!