シリーズ10の21.22シーズンまで考察していた限界雨についての詳細を綴っていきます。
○構築経緯
カイオーガが使用可能なルールということで、すいすいエースと並べて相手に行動させずに上から制圧する動きが分かりやすく強いため、
スカーフカイオーガ+雨エース
の並びを開拓することにしました。
レジエレキの上を取れるすいすいポケモン最優のキングドラは確定で、オーガグドラ@4を考えていきます。
構築のパワーを更に上げるためにすいすいの数を増やしたいという思いが行きすぎて、いっそのこと「限界雨」にしたいという方向性になりました。
そこで、まずは相手の水タイプに強いルンパッパを採用します。
これにより、こちらの水にストップをかけてくる相手の水タイプへの対策が備わりました。
"この調子で残りの枠も水タイプで固めていきたいです。"
…という組み方をしてしまうと、このルールでは誰にも勝てません!
○限界雨の課題
ここで、現環境における限界雨の問題点について触れようと思います。
1.レジエレキとゴリランダーが無理
この2体はどこを見渡しても少なくともどちらかは相手の構築にいます。何がまずいかは単純明快で、こちらの更に上から即死級のダメージを与えてくるからです。
よって、この2体を対策する限界雨とする必要があります。
2.上から殴られる体勢を作ると弱い
追い風やトリックルームによって上から攻撃されると劣勢になります。これはこちらの種族値が低いのではなく、環境全体での火力インフレが原因です。
よって、S操作(追い風が最適)を担う者が必要となります。
3.先制技に弱い
グラススライダーは無論のこと、不意打ちによる潮吹きの火力低下や、猫騙しによるターン稼ぎなどをされてしまうと、試合展開がかなり怪しくなります。これらもまた、環境で多く見られる現象であり、対策は必須です。
これら3要素が余りにも致命的で、限界雨は冠の雪原以降のダブルバトル環境ではほとんど勝てない構築と言えます。
「限界雨を組んでみたけどエレキゴリラとかトリルのせいで全然勝てない…」
という経験を味わった方も多いのではないでしょうか?
しかし……………
私はこれらを全て解決し、尚且つ限界雨を維持する方法を見出しました‼️
まず、問題3は簡単に解消できます。カイオーガ構築にはほぼ必ず入っている「アマージョ」を採用することです。ゴリランダーの攻撃をカットするだけではなく、トリプルアクセルで大幅に体力を削ることができます。これだけでカイオーガの動きはかなり楽になります。
次に、2のS操作への対応を考えます。追い風が望ましいと先述したので、同じくカイオーガ構築に組み込まれる「トルネロス」を採用しました。追い風だけでなく相手の草タイプを処理できる暴風(必中)、別天候ポケモンの後出しへのカウンターとなる雨乞い、トリックルームを妨害する挑発など、諸問題への解決要素の大半を満たしています。
また、トリックルームを許してしまった場合に、それを逆用してトリルエースとなるポケモンを採用するという発想が限界雨には存在します。6体目のポケモンは、電気に強い草タイプにフェアリーに強い鋼打点を持つ「ナットレイ」を採用しました。(最古の限界雨もナットレイ採用です)
この2体は水タイプではありませんが、昔から限界雨を支えるパーツとして活躍してきたポケモンたちです。
(7世代中期以降には雨乞い持ちトルネロスやボルトロスを採用したQRパーティが出回っていた)
これで6体が決定しましたが、並びを見てみましょう。
お気づきでしょうか?
"草タイプが3体もいる"ことに。
そう、「水」がテーマの限界雨は、数々の対策を経て、半分が草タイプと化してしまったのです!!
つまり、「半分水で半分草」の、役割集中型パーティです。これは元来の「水一点に絞る」というテーマから、「水と草の二面に特化する」という、違った意味合いでの【限界】に迫るという新境地へと移行したと言えるでしょう。
半分が草電気に強くなくても、もう半分は綺麗に草電気に強い。問題2・3を対策した結果この構成に至ることにより、問題点1の負担もまた、大幅に解消されているのです。
構築を縦に並べると分かりやすいのですが、
トルネロスの下から水3体-草3体といった具合に、ルンパッパによって綺麗にグラデーションされているところがオシャレポイントです。
構築名は、水特化の限界雨が水草二刀となったことにより、植物要素を付け足したいです。
よって、熱帯雨林のような感覚をイメージし、
『限界雨林』
と名付けました。"限界"の意味が"雨"且つ"林(草タイプ)"に両立してかけることのできるギリギリの形ということで、「限界雨は限界まで雨ポケモンを入れるんだからお前これは違うだろ!」という反論を返り討ちにすることができます。"雨"且つ"草"を両立する限界の形ですから間違ったことは言ってませんし、限界雨の根底にある「タイプは偏らせた方が強い」を継承しつつ、新時代の限界雨の形を示したこの構築は、「限界雨界の革命」と言えるでしょう。
毎回名付けにはかなり拘りますが、今回はシンプルかつ良い名前にできたのではないでしょうか?
○個体紹介
・トルネロス化身フォルム
特性:悪戯心
持ち物:ソクノの実
性格:臆病
技:暴風・挑発・追い風・雨乞い
配分:HSベース
その優秀さは先述した通りですが、補足するなら一つ。雨乞いは必要です。グラードンやコータス投げに対して有効なだけではなく、トルネロスを温存して雨が止んだ試合終盤に再び降らせる動きもできるためです。配分はたいきさんにもらった構築の時から変えていませんが、持ち物は眼鏡レジエレキのボルトチェンジまでを耐えるソクノの実に変更しました。電気で簡単に死なれると追い風2周目ができなくなったり後々面倒なことになりますからね。
特性:雨降らし
持ち物:拘りスカーフ
性格:臆病
技:ハイドロポンプ・冷凍ビーム・雷・潮吹き
配分:スカーフで最速黒バド抜きCS
潮吹きを通すことが最重要なので、この持ち物が最強だと思います。ザシアン黒バドの上から叩き込めることで、すいすいエースとの集中攻撃で何もさせずに倒すことができる点が最大の魅力です。自信満々に初手ワイドガードを使ってくる相手のコジョンドを出し抜くために、アマージョの手助け込みで黒バドをワンパンできるハイドロポンプを採用しています。
特性:すいすい
持ち物:拘り眼鏡
性格:臆病
技:濁流・流星群・暴風・ハイドロポンプ
配分:最速レジエレキ抜きCS(B<D)
唯一レジエレキを抜ける雨エース。水技による削りと突破の両立の他、苦手なドラゴンタイプの処理も担っている重要キャラです。臆病を余儀なくされている上に玉だと火力が足りないので、眼鏡を持たせています。
・ルンパッパ
特性:すいすい
持ち物:突撃チョッキ
性格:控えめ
配分:HBCSを程よく調整
Bは襷ウーラオスのインファイトや222ザシアンの聖剣などを耐えるまで
チョッキでレジエレキの攻撃を始めとする特殊アタッカーに耐性をつけ、ある程度物理耐久に回しています。仮想敵の横に物理アタッカーがいることが多く、最低限耐えられるようにしたかったためです。トリックルームに対してナットレイだけでは厳しい時は、猫騙しで少しでも時間稼ぎができるので、積極的に選出していました。草技は草結びだと重くない水タイプに対して火力が出せないのでリーフストームです。
特性:女王の威厳
持ち物:バコウの実
性格:意地っ張り
配分:HSベース
B 222ザシアンの巨獣斬確定耐え
S 追い風下で最速スカーフカイオーガ抜き
このポケモンがいないと構築が成立していないレベル。手助けが重要で、カイオーガと並べることでスカーフ眼鏡カイオーガを爆誕させることができます。初手アマージョカイオーガを投げられる時(レジエレキがいない時)が最も強いと言っても過言ではありません。素早さも高めに設定しているので、ほとんどの場合ゴリランダー前でも潮吹き+トリプルアクセル集中で行動させずに処理できます。飛行技を喰らう頻度が高いので、持ち物はバコウの実を持たせていますが、これによりかなり延命できるので、他の持ち物と比べて試合展開が格段に良くなります。玉カイリューのダブルウイングも耐えられるくらいには硬いです。(最終日にその状況でアクセル外して某氏に負けたの未だに根に持ってる)
特性:鉄の棘
持ち物:命の玉
性格:勇敢
技:パワーウィップ・ジャイロボール・守る・アイアンローラー
配分:HAベース最遅 陽気ウーラオスのインファイト耐えだった気がする
トリックルームにただ乗りする+引き先として優秀なポケモン。特にシーズン終盤に増えていたトリルカイオーガに強かったです。相性が絶望的に悪い白バド構築に対して、手助けアイアンローラーでワンパンするという最終手段もあるので、かなり重要な役回りを担っています。スイクンなどちょうど倒せる相手が多いと感じたので、命の玉を持たせています。
*補欠
・ゴリランダー
特性:グラスメイカー
持ち物:奇跡の種
性格:意地っ張り
配分:HADベースだったはず
グラスフィールドで草の火力を上げて更なるパワーアップを図るべく、一時採用していました。アマージョの草技もグラススライダーにして、先制技でなぎ倒す戦い方ができます。8月のてるチャレではナットレイを抜いてゴリランダーを入れたversionを持って行きました。
しかし、特定の技の一貫が激しくなってしまうのが気になり(特に毒技)、ゼルネアスへの安定性も考慮してナットレイに戻しました。
○選出と立ち回り
この並びのパワーと対応力が最も高く、安定した勝率を出せます。
カイオーガ(海の大王)
キングドラ(海龍の王)
アマージョ(果実の女王)
トルネロス(伝説の風神)
といった具合に、奇遇にも「王」の名を冠するポケモンで構成された並びであることに気づきました。
よってこの並びを
『海皇雨』
と名付け、以後そう呼びます。定着するといいですね。
●ザシアン △(不利だが頑張れば勝てる)
海皇雨(時々ルンパやナットが入る)
この構築の勝率を下げる1番の原因。ザシアン自体の処理は可能なのですが、それを妨害する襷レジエレキの存在が全てを狂わせます。エレキが襷で耐えてくるせいでザシアンに集中砲火できない。無理矢理エレキを処理しようとするとザシアンで崩壊。このような最悪の状況が存在します。「レジエレキは克服したんじゃないの?」と言いたくなるとは思いますが、これは草の枚数を増やしてこそできる耐性です。しかしこの系統の構築にそれをすると、ザシアンの的になって片っ端から破壊されるので、レジエレキの上を取れて且つザシアンを突破できる可能性のある水タイプを多めに選出せざるを得ないのです。(この状況が発生するのはザシアンくらいで、他の構築に対しては草を増やした恩恵をしっかり受けて有利を取れています)
ただし、レジエレキが襷以外なら上から濁流で一撃なので話は別ですし、そもそもエレキがいないパターンのザシアンもあります。
そして、襷エレキを引いても私は立ち回りで何とか勝利していたので、当たれば確定負けというわけでもありませんでした。とはいえ、戦っていてダントツで疲れることは変わりませんし、何よりランクマでは数が多すぎます。2番目くらいに頭を痛めた禁伝でした。
●カイオーガ ○(場合によるが基本的に有利と言える)
追い風型:海皇雨(時々ルンパ)
多くの強力な草タイプのお陰でカイオーガへの圧力がすごく、相手の草タイプにも暴風勢やアマージョで弱点を突けるので、基本有利と言えます。但し、サンダーやモロバレル、ナットレイなど、こちらに対して有利なポケモンが入っていることも十分に考えられるので、油断せずに適切に行動して処理する必要があります。(こういう時にアマージョのバコウが役立つ)
●黒バドレックス □(普通)
海皇雨
上から殴れば倒せるのですが、レジエレキがいる可能性が高く、ザシアンの時と似た条件になってきます。しかし、黒バドの場合はザシアンと違い、攻撃されたら即落ちということもないため、幾分マシと言えます。
黒バド自体に対しては、襷やスカーフなどの持ち物はまだ我慢して戦えますが、不意のトリックルームだけは勘弁してくれといった感じです。
●ゼルネアス ○
トルネロス・カイオーガ・ルンパッパ・ナットレイ(ゴリラ入りには当然アマージョ)
挑発や追い風が使えるトルネロスや、上から潮吹きを叩き込めるカイオーガ、チョッキでムーンフォースを耐えることがあるルンパッパにワンパン係のナットレイといったように、取り巻きを加味してもゼルネアスに有利に立ち回れる要素は豊富に揃っています。ルンパッパに関しては、ゼルネが火力に振り切っていると25%の低乱数になるようで、一度ワンパンされて驚いてから知りました。(気づいたのは最終日の3時くらい)
相手をしていて感じたのは、追い風を絡めてくるタイプのゼルネが多かったということです。トルネロスを選出せざるを得ない試合が多いのがその証拠です。
●イベルタル □
海皇雨(トルネ不要の場合はナットなど)
一見すると草が多すぎて飛行のイベルタルと相性が悪く思えますが、水のゴリ押しが出来る+草3体が道具と鋼タイプでデスウイングを耐えるため、案外崩されにくいです。チョッキイベルタル+襷エレキみたいなレベルになってくると流石に怪しいですが、そこまで不利なイベルタルとはあまり当たらなかったし、当たっても勝てる可能性はまだあるので気にはなりませんでした。
●ムゲンダイナ ×(不利)
タイプがキツすぎて流石に勝てません。勝てることもありますが、相手が適切な選出と立ち回りを理解していなかったり、運良く択に勝ってさくさく試合が進む場合に限られます。
ムゲンダイナ+ゴリランダーの初手で来られると、上記の選出以外ではすぐに崩されるので、キングドラを駆使して上手くダイナを倒す必要がありますが、どっちを殴るか(どっちが動いてくるか)のジャンケンが必ず発生します。こちらがジャンケンに負けると試合が終わりますが、相手は負けても試合が終わらないので、初手の段階で生きるか即死かを迫られていると思ってください。こいつを使う奴らに負け続けた恨みが、後に限界雨林を闇堕ちさせたと言って良いでしょう。
●白バドレックス △
ご存知の通りブリザードランスの一貫が凄まじいことになっています。この相手の嫌な所はそれだけではなく、コータスがいる可能性が高いという点が最大の問題です。コータス不在の場合、手助け潮吹きで何とかトリル始動要員を破壊(相手がミミッキュならルンパなりグドラなりで集中)でトリルを防ぎ、そこからタコ殴りにして勝てるのですが、天候を変えられてしまうと潮吹きの火力が無に等しくなり、トリル対策のナットレイも焼き払われて絶望的な状況になります。
しかし、コータスがいなければトリルを張られてもナットレイ+アマージョの盤面を作って白バドを倒すことができ、かえって有利となる時もあります。白バド構築にはフィールドを張るメンバーが高確率でいるので、手助けアイアンローラーは発動しやすいです。白バドもシリーズ8の時のように同じメンツしかいないわけではなく多様化しているので、全く希望がないこともないです。
有利でも不利でもないので、トリルに対して序盤は潮吹きを押しつけつつ適切にナットレイをぶつけて立ち回れば良いのですが、相手にツンデツンデというナットレイに打点を持てる厄介なアタッカーがいることが多いので、これに気をつけて(具体的にはルンパの猫騙しで1ターンでも長く足止め)立ち回りたいです。
●成績
シーズン22 最終150位程度
強そうな外見とは裏腹に、いまいちな結果となってしまいました。2桁にも行けなかったのでリバティの大会にも出られません。
反省点というか勝てない原因としては、命中不安定技が多く、最終日は運が悪かったので、順当にレートを落としていったことであると考えます。ザシアンの過剰摂取による疲労も大きいでしょう。命中不安は雨パ使いの宿命なので、今回は恵まれなかったのだと割り切るしかありませんね。
ただ、この構築は一つ小さな功績を残しました。それは、これの別形態が好成績で9月のてるチャレの予選を突破し、best16まで勝ち進んだことです。ですので、ここからは「リバティノート」への寄稿という形で、闇堕ちした限界雨林について説明しようと思います。
ここまで読んでくれた方はありがとうございます。では、続きはリバティノートにてお楽しみください。
○スペシャルサンクス *敬称略
・たいき
海皇雨の原型となった構築を8月冒頭で頂き、そこから考察が始まった。
・じぇむ
9月に入り限界雨林に興味を持ったので構築を下さいと言ってきてくれたので、構築を渡して他者視点での意見を頂いていた。
・キルル
彼がムゲンダイナを使って毎回ボコボコにしてきたのが原因で、私が闇堕ちして次の構築を誕生させ、その結果てるチャレで勝つことができた。